こどもの絵を評価すること

児童画展(絵画コンクール)についての漫画がTwitterでバズっていた。

わたしも小学生相手に美術教室で教えている立場で、作品展をするときにこどもの絵を「選ばなければならない」ときもあって、いろいろ考えるところがあったので思うままにいろいろ書きます。

こどもの作品を「見る」こと

制作後に鑑賞の時間をとることがあって、一般的には「講評」って呼ぶんだけど言葉がかたいので「見る見る会」と呼んでいます。

基本的には褒めスタンスなんだけど、どう褒めるかって難しい。鑑賞の価値基準について考えてみた。

がんばり

ズコー!!!!いきなり根性論みたいで申し訳ないけど、やりたいこと、描きたいことが表現できたか、限られた制作時間と自分の力をぜんぶ使ってねばり強く描けたか、描いたこども自身が満足しているかどうか、などを見ている気がする。

特に、本人が「よくできた」と思っているだろう部分は見逃さないようにしたい。「ここ、よく見て描けたね」って声をかけたときに、こどもからニパっと笑顔が返ってくるとすごくいい。

手数の多さ

「がんばり」にもつながるのだけど、試行錯誤のあとが見える作品は見ごたえがある、と思う。

育児や教育においてよく言われる「過程を褒めろ」は美術教育においてもそのとおりだと思うので、描いたり消したりしながら納得いく線やかたちを探し求めている姿を見ると、同じように絵を描く者としてとても嬉しい。「じょうず」はあとからついてくるのだ。

技術

「がんばり」が製作時の評価だとしたら、技術はそれ以前に習得した努力のしるしなので、技術も評価してあげたい。水彩絵具だったら水の加減や筆の使い方、道具の使い方を見れば、その子がこれまでにどれだけ絵を描いて失敗して工夫してきたかがわかる。

身体的な成長によって技術が向上することも多くあり、描きたいものと技術が一致する瞬間に出会うときは指導者としても感慨深い。

出来栄え重視?過程重視?

自分が何に気をつけてるかなと考えてみたら「過程」を見ようとしてるんだな。

なので、普段の様子を見ていないと評価することは難しいかもしれない。じゃあコンクールなんかで1枚の絵だけを評価することは信用ならないのかというとそうでもなくて、結果的に絵に現れちゃうんじゃないかなって「見た目が9割」みたいな話になっちゃうんですけど、作品がすべてを物語っているんだろう。

過程が作品に現れる。コンクールの選者はそこを読み取ってるんだろうな…きっとそうなんだと思いたい。

美術教育とこどもの成長

こどもっていう生き物はまだ成長途中でそれは絵においても同じこと。

彼らにとって1枚1枚の絵は完成していたとしても、それは通過点でしかない。最新の絵が最良の絵だし、絵を描くことによって自分自身が成長して変化していける。その時作られたものは脱皮した皮のようなものだと思う。

美術教育の目的は「すばらしい作品を作ること」ではなく、こども自身が学んで成長していくことこそが役割なんだと思っている。絵を描いたり作品を作ることはその助けでしかない。(元ツイの漫画の中でも教授のセリフとして描かれていました。読み直して気づいた)

だからその作品を作ることでこども自身が成長できたと感じた(だろうな)と思える作品にはめいっぱい「イイね!」してあげたい。でもその一方で「褒められた絵」を宝物にしてほしくはない。どんどん破り捨てて次のステップに行ってくれ。

作ることは変わることなのです。

児童画コンクールのもつ意味

元ツイートの漫画は絵画コンクールについて否定的というか審査委員のkusoジジイが胸kusoって話だったんだけど、漫画の演出がちょっと過剰かな…とも思えてモヤモヤしたのです。

受賞した子が嬉しい、絵が好きになる、やる気が出るとかそういう作用はもちろんある。一方で不透明な審査や公平性、大人の手が入ることや選者による改変については疑問もある。

ただ、公に行っている以上、コンクール自体だって外側から評価されるわけであって、こどもの絵を公募し続けることや受賞作品を記録に残すことにも価値があって必要なことだと思う。時代性とか…今だったらまさにマスクをしている人々を描いたものを残すことって長く見れば歴史の証明になる。

その中で純粋に(純粋ってなに)いい絵を選ぶってのはやっぱり難しい。どんなにすぐれた絵でも同じモチーフの2作品があったらどちらかは埋もれてしまうわけで、受賞作の偏りをなくすことだってコンクールの性質上仕方がない。学校の偏りをなくすことも「忖度!絶許!」とは思えないんだよなあ。

あと、老人はしゃがんだりするのがつらいので杖や棒やマジックハンドを持つのです。威厳や威圧や怠慢のためではないのだと擁護しておく。

結局は好き嫌いだな?

…といろいろ考えていたら結局あの漫画があんまり好きじゃないんだな、という結論に至りそう。審査の場にショックを受けたのは本当だろうけど、歩み寄って「批判しなきゃ!」という場面は演出だな、というふうに読めてしまうので不誠実だなと思ったりしました。推測ですけど。

でも小学校での美術教育に課題が多い(専門外の先生が担当する)についてはほんとそうよね。現場のご苦労もわかるけれども…

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