新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」ディレイビューイングを見てきました。

映画館でのディレイビューイングで新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」を観てきました。興奮さめやらず、なにか書かねば…と突き動かされたわりには遅めの感想を書きます。

経緯〜見る前に思っていたこと

製作発表から注目していたこの作品。昨年末の公演期間中もTwitterでの高評価をいくつも散見していて是非機会があれば観たいと思っていた。

1月に放送されたNHKスペシャルで舞台制作のドキュメンタリーを見て、ますます観たいという気持ちが膨らみ、ライブ・ビューイングならぬ「ディレイビューイング」という形で鑑賞できたのはとても嬉しい。

この新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」で特筆すべきは原作の漫画7巻ぶんをすべてストーリーに盛り込んでいるというところ。アニメーション映画「風の谷のナウシカ」は原作漫画の1、2巻を中心に映像化したもので、それ以降のストーリーについてはまだ映像化・舞台化などされるのは初めてのこと。映画館で風の谷のナウシカを見て以来、年季の入ったジブリっ子としては見ないわけにいかないだろうと思って義務のような気持ちもあったと思う。見届けなければ、という気持ち。

前述のNHKスペシャルでは、古典歌舞伎の手法を多く取り入れていることを何度もアピールしていて、原作世界を歌舞伎に翻訳することの難しさや、舞台美術や衣装などにおける取捨選択の苦労が描かれていてそれも見どころだなと思っていた。

また、主演である尾上菊之助さんの「ナウシカになりたい」という気持ちがすごく強く伝わってきたのもよかった。ナウシカのかつらをつけた時の「これだ!」という表情がすべてを語っていたな。ドキュメンタリー番組として面白かったので再放送などの機会があれば多くの人に見てほしい。

それにしても前半だけで3時間、チケットも4300円という値段にはちょっとひるむよね。実際の公演のときは昼夜通しで7時間という長丁場だったそうで、想像しただけで尻が死ぬというか、演者はもちろんだけど観る側も体力が試される。でもやっぱり舞台は舞台で見るのがいちばんだと思うので、実際に観られた人は羨ましいな!!

感想など

「どうだった?」って聞かれでひとことで答えるならば第一声は「クシャナ殿下がかっこよかった!」です!!テレビで見た時もめっちゃかっこいいなと思ったけど、スクリーンで見るのはほんとうに身震いするほどかっこよかった!!!ふくらはぎがぶるぶるした!

舞台とは違ってアップに寄ってくれるから、スクリーンで見る喜びがある。口もとのわずかな表情や目線、女性らしいしぐさ、発声…すみからすみまで行き届いていたし、間違いなくクシャナだった。鎧やマントの衣装も原作を踏襲しつつ華やかで美しい。髪飾り(鎧?)についた飾りが、顔の動きにあわせてゆらゆらと揺れて目を離せなくなる。たぶん顔や表情の動きを増幅させてるんだよ、揺れるピアスの法則だよ!

見得を切る姿もめちゃくちゃかっこいいし、陣でくつろいだ佇まいもため息が出るほど美しかった。原作でも映画でも好きなキャラクターだけどますます大好きになったし新しいクシャナの姿を見せてくれてありがとうございますという感じ。

Twitterをざっと検索してみたところ、「夢女」ならぬ「夢第三部隊」というパワーワードを見つけてしまった。夢小説において彼女になっちゃうノリでクシャナの第三部隊に入隊したいし忠誠を誓いたい。とにかくクシャナ殿下にお仕えしたいという気持ちになって自分の中で新たな扉が開いてしまったかもしれん感ある。

対して、菊之助さんの演じるナウシカはふるまいも言葉遣いもおしとやかでまさに「お姫様」といった感じ。「虫愛ずる姫」という言葉がナウシカを表すセリフとして劇中で使われていたので「お姫様」という役割にフォーカスしてるんだなと思った。(たぶん映画・原作ではセリフとしては使われてない。設定としてのみ)

逆に、劇中で「姫ねえさま」という表現がいっさい出なかったのも興味深い。「ねえさま」と呼びかけるほど年少の女児が存在しない=ナウシカがいちばん年少者であることと、人物像の設定が「ねえさま」という言葉からとれる親しみやすさみたいなのとはちょっと遠いところ、浮世離れしたところにあるのかもしれないなと思いました。

テレビでも紹介されていたけど、ナウシカの心情を衣装や髪型の変化で表していたりするので、場面による衣装の移り変わりが楽しかったです(プリキュア的)演じる菊之助さんがめちゃくちゃ楽しんでるな〜〜ってのがバリバリ伝わってきました。

あと、テレビで見たときは「??」と思ったアスベルが、衣装も化粧も髪型もぜーんぜんアスベルじゃないのに舞台の中で動き回るとちゃんとアスベルとして機能しててとても不思議だった。うまく歌舞伎に翻訳されているなと思った。特に、ユパと並ぶシーンでは若々しさが際立ち、はつらつしてて「異国の王子」っていう感じがしてすごくいい。屈託なく明るい話し方は育ちのよさを感じさせ、迷いのない殺陣シーンは見ていてすごく楽しいし元気になる。

実際に水を使った「王蟲の水槽を破壊する」場面はめちゃくちゃ楽しくてドリフ的で(褒め言葉です)心の中で大拍手だった。劇場だったら拍手するところだけど映画館では誰も拍手しないので寂しい。観客として舞台に参加したいのに……ディレイビューイングのお作法難しい。

他にも歌舞伎の登場人物として登場して違和感なく良いなと思ったのはクロトワと蟲使い。お姫様や武人、いわゆるヒーロー・ヒロインだけでなくて、こういった人物を描くのも歌舞伎は得意なんだな。歌舞伎の文法にあてはめられるキャラクターの多さ、ふところの広さに感心したりした。蟲使いの「蟲」たちの動きがよくできてて面白かった。

ナウシカ歌舞伎を見たい!という動機の発端のひとつに、映画では描かれていない土鬼(ドルク)帝国の人たちの登場というのがあったので楽しみにしていたのだけど、僧正さまの頭が「茂じい(吉本新喜劇)」に見えてしまってから気になって気になってついでに他のこともいろいろ考えてしまった…

原作では、土鬼は信仰による国の統治を目指しているので異教徒は迫害され、僧たちが国を牛耳ってる。「僧」という名前だけど、それは神父・牧師・司祭・宮司・神主に類する聖職者としての立場を表す言葉だと解釈していたので土鬼の僧侶たちがまんま「日本におけるお坊さん」のような衣装だったのはナウシカの世界から急に「日本」に引き戻されたみたいで違和感があった。

あーでも歌舞伎における「僧」の型なのだろうか。歌舞伎ができた時代の宗教観に影響されているのかな?舞台で観てたらもしかしたら気にならなかったのかも……見えすぎちゃうのも考えものかもしれん。

それにしても、場面の展開が多くて舞台美術の人は大変そうだなと思ってしまった。上記の水の場面のあと、ユパとアスベルの花道での立ち回りがそこそこ長くて「水のお片づけめっちゃ大変なんだろうな〜〜」と思ってしまった。でもあれほんと舞台どうなってるの…嘘でしょってぐらい水の量が多くて役者さんもびしょ濡れになるし、前の席の人とか花道の近くの人とか濡れてるんじゃないだろうか。遊園地のアトラクションみたいにビニール渡されたりするんだろうか。バレーの試合みたいに花道の床ふく人出てこなかったけど大丈夫??などと思った。

ナウシカがメーヴェに乗って飛ぶシーンもすごくうまくできてた。スクリーンだとアレだけどその時客席にいたら完全に「飛んでる!」て思ったな。遠近感を小さいナウシカ(子役)と小さいメーヴェで表現してたのもすごく面白くて、もともと歌舞伎にある演出方法なのかな?かわいいしなごむ…

客席の上を宙吊りで飛ぶ場面ではナウシカのお手振りもあって心奪われた。アイドルのコンサートかと思った。心のペンライトめっちゃ振りましたわ。ナウシカが恍惚の表情だったのもよかった。

何しろ長い物語なので、端折られてるシーンも多いんだけど、それでもちゃんと繋がってるんですごいと思った。端折られた場面のあのセリフ聞きたいのに!と思ってると別のところでうまく回収されたりしてて「わかってるう!」と思わせるセリフがいくつもあって嬉しかった。

舞台上であえて描かずに「上官への報告」というかたちの語りのみで物語をすすめた部分があったのだけど、かえって脚本の勝利って感じでよかった。臨場感のある騎馬戦の語り、講談のテクニックだなと後から思った。原作ではナウシカが生々しい戦闘を切り抜ける印象的なシーンだけど、舞台で描くのは難しかっただろうし、演じずに描くという手法が説明的すぎないのも脚本のちからだなと思いました。

クシャナ「手を汚さないのは気に入らない」→ナウシカ「言われた通り手を汚しました」というやりとりがあるんだけど、そんなセリフあったかなと違和感があった。原作を読み返してみたらやっぱり違うニュアンスだったのでやっぱ脚本の味付けって重要だなーと思った。っていうか、セリフを歌舞伎の言葉に置換えていくだけでもすごい翻訳力じゃない?それを聞いてちゃんと意味がわかるってのもすごい。日本語って奥深いなあ。

ただ、「粘菌」とか「ヴ王」とか音だけでわかりにくい固有名詞がそのままだったので初見さんに通じるかしらんと心配になるところもあった。翻訳できない部分だからね。そのへんはイヤホンガイドとかがあるからいいのか。

最初の口上で用語の解説があったのは親切だったな〜紗の幕にプロジェクターでタイトルとか文字とか投影されるのいいよね。調べたら「紗幕演出」というらしい。新しい技術によって舞台の表現が広がっていくの楽しいのでもっと見たい。舞台を「今」見る意味があると思うのはこういう技術に関する部分でもあるなあ。

舞台と観客との空間を共有するサービスが随所にあったのも楽しかった(だろうなあ)と思った。

ユパがテトに導かれてナウシカのもとに行くシーン、城内を案内するという設定なのだけど、客席に降りたユパがうろうろするのよね。あれ毎回アドリブだったのだろうと思うとにこにこしちゃう。「そんな狭いところに行くでない」と言って通路でないところを進むユパ様が小道具がお客さんに当たらないように気をつけてて、ちょっと当たっちゃって「大事ないか」というセリフもユパのキャラクターが大事にされててよかった。「あんた誰だ」みたいな客いじりもあって、歌舞伎ってそういうのOKなんだ〜〜ってちょっと面白かった。

さいごに

感想を書くうえで原作漫画をちょっと(のつもりが全部読んでしまう)読み直したのだけど、「歌舞伎」ということを差し引いても全くの別物で驚いた。舞台はめっちゃ面白くて楽しんでまた見たいぐらいなのに、比べてみると似ても似つかない。こんなに味わいの違うものだったか!!

ディテールの再現・舞台化ではなくて、印象を形にしてもらったというか、作り手が表現したいのはこの部分!とにかくナウシカになりたいの!っていうのがはっきり見えて、それもまた「風の谷のナウシカ」だったのだなあと思った。作り手の愛情を感じました。違いを認識してさらに私の中で舞台の評価が上がってしまった。あーーーおもしろかった!!!

前半の上映は20日まで。感想を書くのが遅すぎて終わってしまいました……
後編は2月28日から上映開始。すでに座席指定券を発売中のところもありますね。

ディレイビューイング 全国の上映館(PDF)

27日までならムビチケで前売りチケットを購入すると4000円で観られます!映画館の指定券よりも300円お得!!

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上映館が少ないのがあれですけど、気になってる方はぜひ見てみてください。
んでわたしと感想話してください切実にお願いします。

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